Dannie May Presents “Welcome Home! #2”
2021.7.25 @渋谷TSUTAYA O-nest
w/ 小林私
Reported by 稲垣 遥 Photo by 小澤 彩聖
Dannie May主催ツーマン・ライヴ“Welcome Home!”の第2弾が渋谷TSUTAYA O-nestで行われた。今回のゲストは今早耳リスナーに熱い視線を注がれているシンガー・ソングライター 小林私ということもあり、チケットは発売とほぼ同時にソールド・アウト。期待に胸を膨らませたオーディエンスが続々とフロアに集うと、定刻、赤の柄シャツを着た小林がステージに姿を現した。
この日の小林は、ギター1本を持ちひとりで登場。「光を投げれば」から始めた弾き語りのライヴは、終始彼のペースに観客が巻き込まれていくような感覚だった。文学的なリリックや時にフォーク調のサウンドに乗せて、こぶしを効かせながら日常を露骨に炙り出す姿に焦燥感をかき立てられるが、それをひっくり返すような、達観しているというか、飄々と冗談を言い、リスナーの気を抜かせる曲間のMCも同じくらい印象に残るステージだったのだ。全9曲を披露して無二の存在感を放ち、深々とお辞儀をして去っていった。
遠吠えや夜を彷彿するような音に、幾何学的なデジタル音が重なっていき、タイムスリップ感を感じさせたSEのあと、Dannie Mayの3人とサポートの成瀬太智(Dr)が「バブ28」を一発目に鳴らした。音源とは違い、ライヴではしっとりとした3人のアカペラから始まるこの曲でのスタートは、“コーラス系バンド”という彼らのスタイルを印象づけると共に、柔らかく温かな楽曲で初見の人への間口を広げる幕開けだったと思う。
渋谷TSUTAYA O-nestにお越しのみなさん、こんばんはDannie Mayです。どうぞよろしく!”とマサ(Vo/Gt)が言うと「灰々」で一気に音圧を上げ、ムーディさと鋭さを兼ね備えたサウンドで、ぐっとその緩急をもってフロアを惹きつけた。その振り幅があってか、自主企画に懸ける気合もあってか、マサだけでなく、田中タリラ(Vo/Key)のヴォーカルもこれまで観たライヴの中でも特にパワフルだ。続く「針よ墜とせぬ、暮夜の息」では手拍子が起こると“ありがとう!”とオーディエンスに伝えるマサ。そうして俊敏に聴き手とコミュニケーションをとる姿からは生の空気が感じられ、ささやかながら今の時代により大切な瞬間だと思った。
MCではマサが、楽屋での小林私の様子について“スマホで「2048」って昔流行ったゲームをめちゃくちゃしてる”とイジると、フロアにいた小林から“バラすな!”とツッコみが入るなど、小林とも打ち解けつつ、オーディエンスも笑わせるいい雰囲気。最新作『タテマエ』、『ホンネ』収録曲もたくさん演奏すると予告すると、ミニマムな音像のあとサビで稲妻が落ちるようにシンバルや重低音が炸裂する「If you イフユー」のアウトロから、シームレスに運動会BGMの定番 ネッケ「Csikos Post」のあのフレーズへ巧みに繋ぎ、話題の新曲「適切でいたい」へ。Yuno(Cho/Kantoku)が指で、ピストルで撃つモーションをしていたのもハマっていた。さらにTHE夏! と言いたくなる、全世代に届きそうなポップ・チューン「万年青」を挟んで「ええじゃないか」。四つ打ちのこの曲はライヴで映え、そして、大きなフェスでも盛り上がる景色が想像できる盛り上がりだった。
およそ3ヶ月で2枚のEP『タテマエ』、『ホンネ』の怒濤の制作を終えたとき、“これからDannie Mayをどうしたい?”とタリラ、Yunoから聞かれたと話すマサ。これまではバンドを続けることを目標としてきたが、そこで立ち返り、マサ自身、中学生の頃いじめられていて、“何か一芸が秀でていないといけない”という気持ちで音楽を始めたと、初心を思い返したと言う。そして、これからは“誰にもつらい気持ちを相談できなかった人の帰る場所でありたい”と、改めて今後のアティテュードを表明した。自身の過去も正直な気持ちも曝け出した言葉を受け止める拍手が湧くなか、バンドへの想いがこもった歌「御蘇-Gosu-」を演奏。個人的にはその日によって特に刺さるフレーズが変わるこの曲だが、この日はそんなマサの言葉を聞いたからか、“誰かのための生き様 無様な姿晒すだけの性/一か八かに賭けてみたい”というリリックに胸が熱くなったし、フロアで湧いた温かなクラップが明るい未来を照らしていたように感じた。
アンコールを受けては、まずタリラと成瀬がふたりでステージに。アドリブなのか? と思うようなふたりの目くばせから徐々に始まったインタールードにYuno、マサが加わっていき、そこから「暴食」へ。また“前回「これからどんどん大きくなっていくDannie Mayを見ててください」って言ったと思うんですが、今日は発表があります!”とマサが言うと、11月28日に渋谷WWWで初のワンマン・ライヴ[1st Oneman Live “胎動”]を開催することをアナウンス。“もー夢のハコ!”と嬉しそうに言うマサはハイテンションのまま“最後は踊りまくって終わろう!”とラストに「ユートピア」を奏でたが、フロアの祝福ムードを受けてであろう。タリラも、いつもはクールなYunoまでも笑顔を見せる。初単独公演を前に、先に楽しみな約束ができたことで、すでにワンマンかと思うほどの祝祭感で会場が埋め尽くされ、最高にハッピーなダンス・ナンバーでこの夜を締めくくったのだった。
[SET LIST]
M1:バブ28
M2:灰々
M3:針よ墜とせぬ、暮夜の息
M4:If you イフユー
M5:適切でいたい
M6:万年青
M7:ええじゃないか
M8:御蘇-Gosu
-ENCORE-
EC1:暴食
EC2:ユートピア